あまりにもBlues的な……
塩次君は心臓が悪かったらしい。
海外旅行をよくご一緒したYさんのほうは高血圧気味で、一度軽い脳梗塞で倒れ復帰するということがあった。二人に共通するのはミュージシャンだったこと。ただし、Yさんはセミプロに近いアマチュアで、MartinやらGibsonなど、ヴィンテージ・フォークギターのコレクターでもあった。塩次君はFender好きのようだ。
Yさんが一歳上で、塩次君と僕は同じ学年。
Yさんのバンド歴はアメリカン・フォークのPPM(ピーター・ポール&マリー)などから始まり、ブルーグラスへと繋がる。いわゆるアコースティック系。
塩次君は、「週休六日--」に書いたように、ヴェンチャーズ、寺内タケシなどの歌なしギター・インストゥルメンタル・バンドでのコピーから入った(たぶん)。いわゆるエレキ派。
そして、僕はビートルズなどのコピーで、リヴァプール・サウンド系歌もの主体。
60年代の終わりから70年代に掛けて、バンド好きの間で白人ブルースのブームが起こった。そのきっかけを作ったのは、ジョン・メイオール率いる『ブルース・ブレイカーズ』という英国産ブルース・バンドだが、その悪く言えば3コードしかない、どれもこれも同じ展開の同じメロディ同じ曲にしか聞こえない演奏ばかりやるマイナーなバンドに、今やオヤジロックの巨匠エリック・クラプトンが加わったことで、文字通りブルースがブレイクすることになった。アフリカ系米国人が、俺たちの音楽が白人に盗まれたと評するほどに。
そんなわけで、味噌も糞も猫も杓子も僕も昨日電話をくれた社長も、曲がりなりにギターが弾けるヤツは大抵ブルースを弾きたがり、ついでに、ブルースではないが『天国への階段』のイントロを弾くという時代である。そのせいで、映画『ブルース・ブラザース』に於ける、レイ・チャールズ演じる盲目店主の経営する楽器店の柱には「『天国への階段』の試奏を禁ず」という貼り紙がガシッと貼られてある。ギター屋なら爆笑必至のギャグだ。
そんな時代背景があり、当時としては曲芸的と思われていた寺内タケシのギタテクを難なくコピー出来ていたギター・キッズの塩次君だから、彼が次のステップに選んだのが、ギターが主役のシカゴ・ブルースであったのは必然であったろう。
それにしても、若すぎる死である。
昨日、下のような弔電を打った。ちゃんと届いていることを祈る。
突然の悲しいお知らせに言葉もありません。
迂闊にも、まだいつでも伸二君のギターを生で聴けるものと思っていました。どうか安らかな旅立ちでありますように。
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コメント
>歳を経てもっと経験を積めば
>冷静に受け止められるようになりますか。
更にうーんと歳を取って惚けが入ってくれば、すべてが夢か現か幻か、ぼやーんと曖昧で無感覚になっていくような気がします。
あるいは、素に帰って、子供のようにおびえたり。
投稿: ヨジラ | 2008/10/24 22:59
映像を見ました。
生粋のギター弾きですね。
舞台に立つ人は、舞台で死ねれば本望という言い方をしますが
それは芸の道を貫くという意味であって
客を待たせることは絶対にしたくないはずでしょう。
ツアーも始まったばかりでたくさんのファンがチケットを持って待っている中、去っていくのはどんなに心残りだったろうと思います。
先月知人を亡くして
この頃は生き死にのことばかり考えてしまいます。
歳を経てもっと経験を積めば
冷静に受け止められるようになりますか。
投稿: パウ | 2008/10/24 00:17