「最後の努力/ローマ人の物語」
塩野七生著「ローマ人の物語」だが、文庫版で読み始めた手前、既に完結した単行本に浮気することなく、気長に文庫版の続刊が出るのを待っていたら、先日(奥付は2009年8月29日)書店に並んでいたので早速購入して読んだ。
「最後の努力」(上中下/新潮文庫)35、36、37巻で、単行本だと13巻目にあたる。このシリーズで最も面白いと思ったのは、僕に限らず、おそらく誰でもそうであるように、ハンニバルを序章に、カエサルが「賽は投げられた」とルビコン川を渡り、アウグストゥスが古代ローマ帝国の初代皇帝(市民の第一人者)になるあたりだ。シェークスピアは言わずもがな、過去多くの小説や映画の題材に取り上げられてきた。イギリスBBC制作の大河ドラマ「ローマ」の舞台もほぼこの時代。中でも超売れっ子キャラはクレオパトラだろう。普通は「歴史の陰に女あり」なのだが、彼女は男ばかりの古代ローマ史の中にあって、紅一点、堂々表舞台に登場するのだから、まさに役得のキャラクターといえる。
で、今回の「最後の努力」も、ほんの今しがた読んだばかりなので余計に印象が強いということもあるが、あの広大な古代ローマ帝国が、一神教であるキリスト教支配の世界に取って代わっていく歴史の瞬間を目撃したという意味で、この「ローマ人の~」シリーズの中でも特に感慨深いものがあった。まさにコンスタンティヌス帝による「賽は投げられた」であり、以降の世界は現代に至っても尚、キリスト教とは切っても切れない、切りたくても切らせてくれない関係になるのである。この2,000年間の人類の歴史に、良くも悪くも一刻も休むことなく、最も強く密接に関わってきた宗教がキリスト教なら、最も強い影響を与えた人物がキリストということになろうか。
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