「ファンタジー撲滅委員会会長」
田中靖彦著「ハリウッド・ストーリー・テリング」を目覚めに読んでいたら、「危機感を感じた僕はファンタジー禁止令を発した」というフレーズに出会い、思わず笑った。
つまり、スピルバーグ、ルーカス、ニンテンドー、プレイステーション以降に育った映画学科の若者はファンタジーが好きというか、そういうプロットばかりを提出してくるため上記の発令をしたという、僕がこの10年近くマンガのクラスでイヤという程経験してきたことと全く同じことが書かれていたので、思わず笑ってしまったというわけだ。
ちなみに、僕は学校では「ファンタジー撲滅委員会会長」を自ら名乗っている(笑)。これを聞いて、学生の中には僕がファンタジーが嫌いのだと誤解する者もいるが、もちろんそうじゃなくて、「提出作品には将来伸びそうな芽を感じるものとそうでないものがあるが、そうでないものの最右翼で最も読むに耐えないものが君たちの描いたファンタジーなんだ」と。
ついでに、「君たち、ファンタジーを描いても良いけど、遠回りして時間を浪費するだけで、マンガを描くのに必要なものはほとんど身につかないよ」とも。
その甲斐あるやなしや、僕の課題作にあからさまなゲーム系ファンタジーを描いてくる学生はほとんどいない。
☆
ちなみにこの本、70~80%ほど読み終えたところだが、ハリウッド・メソッドによる物語構成術は何とかというハリウッドの脚本家が書いたタネ本が元々あって、それはウチのマンガコースでたびたび特別講師をしていただいている脚本家の白石さんの講義でもお馴染みのヤツだが、ハウツー性が高いので、物語作家になりたい者にとっては大いに役に立つことは間違いない。
ただ、あくまで映画という時間の制約のあるメディアのためのノウハウなので、人気がある限り何年も何十年もハナシが完結しないままだらだらと(?)続いていくような連載マンガに、そのまま援用出来るかというとどうかな? とは思うが、短編でしか勝負出来ない投稿用マンガとなると、まずここに書かれたフォーマットこそが必要だろう(※)。映画に於ける時間の制約と同様に、投稿用の(連載ではない読み切りの)短編にはページの制約と一話完結が義務づけられているからだ。
(※)もっとも、職業として成立させるには必要且つ十分ということであって、天才や狂気といったものの持ち合わせのない努力家タイプの者には、という但し書きが付くかもしれない。
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