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2010/01/10

ペレルマンの評伝を読み終えて

「完全なる証明/100万ドルを拒否した天才数学者」(マーシャ・ガッセン著/青木薫訳/文藝春秋社刊)を読了。

例のポアンカレ予想を証明して、そのあと森に引き籠もってしまったユダヤ系ロシア人数学者の評伝である。但し、ペレルマン本人への直接の取材は全くない。なにせ、森に引き籠もったっきり誰とも会おうとしない人なのだから。なので、過去、彼の周囲にいた人々への取材のみで構成されている。

そのためか、ペレルマン自身の本当の心のうちは読むことが出来ない。あくまで、こうであろうという推測でしかない。

ポアンカレ予想と証明についても、この本からはほとんど何も知ることは出来ない。ほんの手がかりみたいなものは書かれてあるが、よくわからない。もっとも、詳しく書かれていたとしても、我々には更にちんぷんかんぷんな筈である。おそらく最初の一字一句さえ理解出来まい。なので、別に必要ないというか、無駄なページを買わされずに済むわけで、皮肉でも何でもなく、良心的な本と素直に感謝すべきかもしれない。実際、数学の本ではなく、人間についての本だから読みやすい。もっとも、その頭脳のほうは“人間離れ”しているようだが。

権威ある賞と100万ドルもの賞金を拒否するのだから、奇矯な人であることは間違いない。が、そうしてしまう気持ちだけはそれなりに僕にも理解出来る。まぁ、古今東西、天才は天才であるが故に、凡俗には到底理解出来ない孤独や苦悩を味わう羽目になるようで、やはり凡俗的な幸福観から言えば、あんまり幸福だった天才はいないのかもしれない。

ただ、「燕雀いずくんぞ鴻鵠の志を知らんや」である。
幸福観自体が凡俗とは違っているわけだから、現在のペレルマンの、俗と関わり合わなくて済む生活は彼なりに幸福なんじゃないかという気はする。
彼は森に引き籠もる前に、数学の(政治的・商業的な意味での)世界にすっかり嫌気がさして、数学をやめると言ったらしい。そして、波のように押し寄せるオファーをすべて拒絶して隠遁。

商業的な成功よりは、方法論としてのマンガの成功を追い求めていたどこぞのマンガ家もまた、(商業的な成功ばかりに群がる)マンガの世界に嫌気がさして、半ば隠遁しているが、ペレルマンと違って、断るオファーなど一つもない。(笑)

脱字が二箇所ほどあった。
ふうん、文春の本にもあるんだと思った。

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